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「007 / 慰めの報酬」 [watching]

 ソニーピクチャーズになってから、これまでのイメージを払拭しようと言う野心自体がこの作品のイメージになってしまっていると受け取れるほど恥ずかしげもないこだわりが露わになっている。
 けど、成功したと思うよ。特に、立て続けに2作を輩出するというマーケティングは既概念の払拭、新イメージの定着、両方の戦略において有効だったと思う。監督としては「カジノ」と「慰め」で1作品とみなしたい考えだったみたいだから、そこの判断を覆した人こそ讃えられるべきだろうね。

 新しいボンドは人間臭いのが特徴で、たぶんそこが一番の面白みになっていると思う。恋愛に関しては
子供っぽいと思うくらいストレートで、そんなんではスパイになれんだろと思うくらいだが、新しい007に関してはそれもコンセプトなのかも。前作で、007ともあろうものが、一公務員に本気で恋したり、嫉妬したりする姿は観てて愉快だった。あと、私が個人的に最もこの作品で気に入っている点の一つにくだらないジョークみたいのが出てこないことだ。今までのだと絶対必ずどこかしらにコメディの要素が入ってくる。そうしなきゃいけない契約になっているとでも言うがごとく必ずそういうワンシーンが入っている。007の取る笑いなんて誰も期待しなくない?007のチャーミングさをアピールしたいんだろうけど、かわいらしい魅力なら他にいくらでも表現のしようがあると思うんだけど。

 そんな人間臭い新生ボンドがバンバン人を殺していく様子はまさに痛快だった。Mにがみがみ言われながらも、完全に個人的欲望のはけ口として目の前の敵を惨殺していく。それでも、そんなむごたらしさをあまり感じさせずスタイリッシュなアクションの見せ場に仕立て上げられているところがすばらしいと思った。アクションシーンは本当にかっこいいよ。冒頭のカーレースの場面もそうだけど、トスカーナのお祭りを舞台にしての追跡劇も見物だった。個人的にはあんなとこであんなことしたらその時点で諜報員アウトだと思うんだけどね。いい加減目立ちすぎでしょう。地元警察に目を付けられるはおろか、民間人の犠牲者まし出しちゃって。スパイはもっとこそっと、少なくとも民間人に迷惑かからないように仕事するもんじゃないの?でなかったら、身元隠して諜報活動する意味ないよね。

 ピアース・ブロスナンが007を始めてから、どっかの雑誌で紳士服のモデルに使われているのを見て笑った記憶がある。まんま007だなと思って。けど、ダニエル・クレイグの場合は逆。あまりにも決まったスーツ姿で画面に出てきた途端に紳士服の広告が歩いているように見えてしまう。多分、かっこよく着過ぎてて、生活感なさすぎな雰囲気に違和感を覚えるんだと思う。どこを切り取ってもいかにもモデルでございって感じになっちゃってて、それが形で風切ってで歩いて来るのがまたおかしい。
 で、なんだってこんなにお仕着せのモデルっぽさ丸出しなんだろうと思ったら、プログラムに衣装は全部トム・フォードだって書いてあって納得した。どうりでそんなにいやらしいわけだ。なんかもうどんな服も全てmm単位で寸法測って裁断しましたって言うくらいぴっちりしてて、どうでもいいけどそんなかっこいい恰好で肉体労働者しかいないような港湾を盗んだカブみたいなバイクで流してたら目立ってしょうがないだろうと思って腑に落ちなかった。けどさあ、パーティー服とか、公務で着させられる服がみんなトム・フォードって言うのはなんかもう、「あー、そうなんだ?」って感じだけど、でも諜報員の私服もトム・フォードって言うのは贔屓目に考えても気持ち悪いよね。

 個人的には今回のヒロインの女の子はあまり好きじゃなかった。じゃあ、どんなんがよかったかと言われてもあれなんだが、もっと繊細な表現の出来る子だったらよかったなと。そう思う。かたくなな表情ばかりが印象に残ってしまって、も少し彼女の人間性に惹かれるようなハッとさせられるような表情とかが見れるとよかったんだけど。
 むしろ、ボンドに手を付けられてしまったがばっかりに、むごたらしい拷問をされて死んでしまった女の子の方が私の好みだったかな。女の子としてのキラキラ感があって。あれはまあ、比べてしまえば簡単な役ではあっただろうけど。

 ソニーピクチャーズになったからだけど、ちょいちょいソニーデバイスが出てきて私の失笑を買った。そんなクリティカルな場面にソニー製品なんかまず使わないだろうと思うのは私だけだろうか。ソニー製品がプロ事業で通用するのって、放送業界だけな気がするから。

 007は決まって主題歌のPVみたいなイントロを挟んでから始まるけれど、今回は観に行くまでジャック・ホワイトが歌ってるって知らなかった。そう言えば、アリシア・キーズとデュエットするってどっかで読んだななんてぼんやり思ったけれど、すっかり忘れてた。音楽的にも似てる所があるわけでもないし、お互い個性が強いし、二人が一緒に仕事をしようと思う接点が分からんななんて思ったけれど、しかしこれが楽曲として重なるとスゲーーかっこよかった。所詮二人ともソニーレーベルという接点でしかないのかもしれないし、本人や周りがなんと評しているのかは知らないけれど、私は想像していた以上の相乗効果だなと思った。

 スタイリッシュなアクション映画と評すると、また友達に「どこのコピー屋…」と呆れられそうだけれど、まさにそんな胡散臭いコピーがぴったりなほどスタイリッシュに出来上がっている007だ。見事に脱皮したと思う。既にダニエル・クレイグに付いているハード・ボイルドなイメージをうまく作品に組み込めたと思う。
 成功してしまったがために、そしてまたボンドを非常に人間くさく作ってしまったがために次のハードルはかなり高くなると思う。この作品で描いたのは、完成されたボンドではなく、人間として未完成なボンド姿だ。と言うことは、これ以降の作品ではボンドは成長していなくてはならないだろう。もしくは、成長の過程を目に出来なければならないだろう。
 個人的には、Mにピアース・ブロスナンの頃から引き続いてジュディ・デンチを使っているのも、今まで007になかった人間臭さを演出するエピソードを担っていると思う。Mは同じ。でも、007は別人。否応なしに配置転換、人事制度を彷彿とさせられた。年老いて傷ついた007は引退し、若くてまだ傷つきがいのある新しい007が入ってくる。新しく入ってきた007をMは扱いにくいわと頭を悩ます。今回の2作品はそんなふうにも取れて、007を単なるおとぎ話ではなく、もう少し自分に身近な日常に重ね合わせて観ることを可能にしているようにも思える。
 しかし、所詮は「セールス」の世界の中の「商品」。次回作にどこまでプライド賭けて真面目に作るかしらね。

 イメージを覆すために図らず時も自ら高くしてしまったハードルを企業がどう乗り越えるのか。
 次を楽しみにしたいと思う

 ちなみに、この邦題はよかったと思う。タイトルと中身が寄り添っている。頑張って考えたと思うよ。その辺からしてソニーピクチャーズの気合いの入り様が覗えるね。

007qos.jpg
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