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「借り暮らしのアリエッティ」 [watching]

 このレビューは書きづらくて悩んでしまって、観た後暫く手をつけられなかった。
 というのも、ツレは面白かったと言って喜んでいたから、それはそれでよかったんだけれど、私自身は正直、「面白い」とは程遠い作品だと思ったので。

 例えて言うなら、コーエン兄弟は、3回に1回くらいの割合で良い作品を作ると言われているけれど、ジブリ作品の良しあしもそれに似ている。個人的にはジブリ作品の方がそのインターバルは大きいと思ってる。
 「アリエッティ」が駿監督の作品でないことは、なんと観終わってプログラムを読むまで知らなかったんだけど、しかし、この中途半端さはだからこそかと納得もした。
 思うにやはり、駿の作品づくりにかける情熱とか、思い入れとかって言うのが人並み外れているので、いくら駿が元ネタを出したところで、それを他の人間が手掛けるのではこの程度だということなんだろう。「ゲド戦記」もそうだったじゃない。やっぱ思い入れの強い物の方がいい作品になるよ。普通。

 まずこの映画の最初の罪は、主題歌を日本語で歌わせていること。いいじゃん、原語で。彼女が自分の言葉で歌ってるのを聞いて気に入ったんでしょ?なんでわざわざ彼女にとって意味の分からない日本語で歌わせるの?どんだけ尊大なんだよ日本人。無理矢理外人に日本語で歌わせたところでいい歌であるわけがない。原語で歌ってる曲に惚れたんなら、映画も原語での曲を採用するべきだった。歌ってる本人だって思い入れが違うよ。なんだって日本語でなんか歌わせようと思ったんだろ。子供たちが歌えるようにとかいう気遣いなら、そもそも外人なんか採用すんな。しかもだ、そこまでさせて、ちっとも印象に残らない曲だった。歌手としては歌い損だぜ。

 アリエッティはもちろん駿好みの「強い」女の子だった。初対面の人間の男の子に「君たちは滅びる運命だ」みたいな不躾極まりない言葉を浴びせかけられても、気丈に自分の将来の展望を持って反論するという度胸がある。とても初めて人間を相手にしているとは思えない。きっと子供だからなんだろうなと思った。怖い物がないんだよ。怖い物を知らないって言うか。ポッドやホミリーではとてもじゃないが、人間とそんな風に語り合おうなんて気は起こさないだろう。実際、人間に見られたかもしれないという可能性をほのめかしただけでもポッドは、二度と近付かないようにとアリエッティにピシャリと言いつけた。という言いつけにあっさり背いて男の子に会いに行くアリエッティ。愚かだ…。愚かだが、若者らしい好奇心だなとも思った。若い頃は、怖い物がない上に、視界が狭い。自分の世界だけで完結しちゃってるから、まさか自分の思慮を欠いた行動が自分たちの生活を脅かすようなことで、ましてやお母さんを人間に捕られて瓶詰めにされるような事態を招くとは思いもしなかった、と後で振り返って反省することなどを思い付きもしないくらいだ。これらの災厄はみんなお前のせいだというのに。アリエッティ。アリエッティに兄弟がいたならきっともっと違ったんだろうなと思う。はやり、子供は家庭に兄弟がいた方がいいね。

 翔って男の子もヘンだった。驚かなさ過ぎだよ。いくら心臓が悪いからっつったって。せっかく夢の小人に会えたんだからさ、子供らしい発見の喜びとか、興奮があった方が、アリエッティとの出会いがもっとこのヘタレ少年にとって意味深い物になっるってことが観てる方に伝わったんじゃないだろうか。
 普通、小人なんか見つけたらびっくりしないか??いくら心臓が悪くても。息を飲むくらいのことはあっても良かったと思うのに。なんつーか、この病弱少年のおかげでこの映画は、特に微妙であるはずのアリエッティと少年の間柄は、ひどく緊張感のない物になってしまっていた。なんだかもう、最初からそういう関係であったかのように振舞いやがってつまらない。この家には小人が出ると知っていた少年の方はまだしも、日々人間という存在を警戒しながら生きているはずのアリエッティが病弱少年になれなれしすぎるのが鼻に付いた。違う価値観の世界に住む二人が助け合う話なんだから、二人の絆がそれほどまでに深まっていく過程をもっと丁寧に描くべきだったと思う。そしたら私ももっと感情移入出来たよ。
 しかし、ジブリ作品でここまで魅力のない男の子キャラはめずらしい。これも駿作品でないせいかしらと思った。

 緊張感があったのはむしろ人間関係の方だった。小人手に入れたさに、家主が預かってる子供を部屋に閉じ込める老家政婦の姿にはぞっとした。この映画で一番緊張感の入る瞬間だ。本当に危険なのは、特別な人じゃなく、普段からあなたの一番近くにいる人というホラー。おばあさん独特の邪悪さってあるじゃない?舌切り雀の昔から、悪いおばあさんて言うのはいて、そう言う人は、隣人に対して不寛容で、疑り深く、嫉妬深い。それゆえに目をつけたものがあると、そのために他人を出し抜こうとしたり、陥れようとしたりする。しかも、恐ろしいことに、やってる本人はそれが人として恥ずべき行為であるなどとは露ほども思っていない。罰が当たるまでは。それをハルさんでよく表現で来てたと思う。

 そして、なにより残念だったのは、私はアリエッティの住むミニチュア世界をそれほど魅力的とは思えなかったことが、この作品を楽しめなかった大きな理由だと思う。だって、なぜ生活様式が西洋風なのだ。先祖はヨーロッパから渡って来たのか。そして、借り暮らしとは言いながら、きっと返すことはないのだろう。まあ、元ネタはイギリスかどっかのおとぎ話とは聞いていたけれど、まさか生活様式そのまんま持ってくるとは……。そりゃ滅ぶよ。ていうか、人から盗んで生きてるなら遅かれ早かれ見つかると思うよ。

 そんな中、突如現れたよその生き残りがジムシーだったのには驚かされた。ジムシーの先祖って小人だったのか……。声優に藤原竜也を当てているけれど、台詞なんてあったっけ?って感じ。
 ジブリは「もののけ姫」辺りから芸能人を声優に当てるようになったけれど、私は基本的にそれが好きじゃない。ハリウッドのアニメ映画なんかはもっと露骨にやるけれど、役のイメージに合った声を持つ、アテレコが上手い芸能人なんて殆どいない。なぜ素人じみた演技しかできない芸能人なんか使ってわざわざ作品の出来を下げるんだろう。なぜプロフェッショナルな声優を使わないのか理解に苦しむ。

 理解に苦しむと言えばラストシーン。薬缶はまずいだろう。薬缶は。そんなのすぐ見つかるって……。
 しかもロープのガイドまし付いてるんじゃん。まあ、よしんばロープは使用後取り外すんだとしてもだよ、川の上を薬缶で移動するというだけで十分目立ち過ぎなのに、ましてやその蓋の上に乗って木の実なんか食べてるようでは、とても住み慣れた家を捨てる羽目になった理由をアリエッティが反省しているとは思えない。確かにあの家族はたくましいが、娘のその向こう見ずな性格ゆえに、病弱少年の預言の通り、いずれ遠からぬうちに滅ぶであろう。
 あんなに堅実なポッドが持ち前の「慎重さ」を娘に教え込まずに、あそこまで好奇心を野放しにしておいたのが意外だ。自分たちは遠からず滅ぶ運命だからとあきらめて好きにさておいたのか。まあ、森に引っ越したら人間以上に獰猛な敵はわんさといるから、娘も嫌でも「慎重さ」を学ぶだろうけど、学んだときにはもう死んでるかもしれんな。

 駿も最近は後継者育成を気にしてるような製作をしているけれど、私たちもあといくつ本人が手掛けた作品を観ることが出来るのやら。個人的には、自分の亡きあとを憂いで、後継者育成と言ってヘタに他人に自分のアイディアをいじらせるよりも、死ぬまで自分の手で一生懸命作品作って後は知らんてやった方がベストだと思うんだけどな。それが一番いい後継者育成になると思うんだけど。
 つまりね、ボスの目の黒いうちは誰もジブリの看板背負ってのびのびとなんか仕事できないんだから、だったらボスが好き勝手にやって、たくさんいい作品を残して、生きている間は精一杯仕事をしてる姿を見せてやることの方が後に残される人間にとっては勉強になるんじゃないかなってこと。
 まあ、本人にはそんな気はさらさらなくて、後継のことなんか気にしておらん、単に若いもんにチャンスを与えているだけだって言うかもしれないけど。
 だったら、そのチャンスが十分に活かせていないみたいなので、やっぱり自分で作ってくださいと私は言いたい。

 久しぶりのジブリ作品だったけど、観た感想は残念としか言いようがなかった。
 監督が駿でない分、それもいたしかたないのかなと思うので、ここはぜひ見逃している「ポニョ」と「ハウル」を観てみたいと思う。実は「ハウル」は昔から気になっていたんだけれど、キムタクが声をやっているというので、どうしても観る気がしないのだが、「アリエッティ」がここまで期待外れだと、過去に見逃した作品に当たりがあったのではと思いたくもなるもの。
 キムタクがやってないブルーレイとか出ないかな。
 ね。


arietti.jpg
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